長野市立松代小学校

「大切な人を守れるように~地域や災害について学び、防災について考えよう~」

1ねらい

2019年の台風19号の洪水被害から地域の自主防災会と連携しての地域防災学習の計画が始まった。2019年の台風19号の際は、本校はグランドが浸水し、児童の中にも被災した家庭があった。2019年の洪水被害を教訓に、子どもたちが地域の災害について知り、防災活動に取り組んでいる人と連携しながら、大切な人を守るために何ができるかについて考えることができる。

2 概要

(1)地域連携防災学習

 ① 日時 令和5年10月25日(水)

 ② 内容

   ア 4学年HUGゲーム「松代小学校に避難所が開設されたら」

     講師日本赤十字長野支部

4年生は、社会科で防災に関する学習を行っている。今回は公助について学びたいということで、日本赤十字の方を講師に、4年生が避難所運営者となって、様々な避難者を受け入れていくというHUGゲームを行った。本年度、松代地区では、住民自治協議会が主催となって防災人材育成講座を開催しており、その関係者も参観に来ていた。

学習は、赤ちゃんや高齢者のいる家族、インフルエンザの人、杖を突いている人、犬を連れている人、看護師免許をもっている人など、様々な人が避難をしてくる中、4年生はグループの人と話し合いながら避難者を受け入れていくという体験型学習だった。「この家族とこの家族、仲良くなれたらいいから近くにしよう」「杖をついていても元気だから家族と一緒にいたいよね。」などなど、避難してくる人の立場に立って真剣に話し合っている4年生の姿があった。

イ  5学年「防災かみしばい」に学ぶ

   講師松代復興応援実行委員会

5年生は「防災かみしばい」を中心に2019年の台風19号の洪水についての学習を行った。「防災かみしばい」は、2019年の松代地区の水害を忘れず、今後に生かしていくことを目的に、松代地区の方々によって作られた紙芝居である。松代地区の方々は、水害がおきた時にも協力し合って対応をしたが、水害が起こった後にも協力し合ってその時のことを記録として残した。児童の中にも水害の記憶は残っているが、当時小学校1年生ということと被害にあわずに済んだ家庭もあり、今回の紙芝居で多くのことを学ぶことがきた。紙芝居の後には「まつしろ防災すごろく」を紹介され、自分たちでもすごろくを作るなどの学習に発展していった。また、地域の危険個所や防災設備への関心が高まり、地域防災マップ作りに発展していった。

ウ  4・5年避難所炊き出し見学・防災倉庫見学

   講師日赤奉仕団松代分団

日赤奉仕団松代分団の方々が行う炊出しの様子を見学した。松代分団長から2019年の台風19号水害の際には、被災地域におにぎりやきのこ汁を配ったことやその時の人々の様子をお聞きした。炊出しで作れる料理も紹介され、そのレパートリーの多さに児童は驚いていた。この日は、生米、水、ケチャップ、野菜などを入れた袋を防災倉庫から出したガスコンロと大鍋で湯煎したケチャップライスを作る様子を見学した。「奉仕団の人たちもおなかがすいている中、おにぎりなどを配ったと聞いてありがたい気持ちになった」「奉仕団がいてくれたらまた大きな災害があっても安心できる」という感想が児童から聞かれた。困っている人たちのために働く奉仕団の方々の姿は、子どもたちの中に感動を残した。

(3)地域防災マップ作り

5年生が地域連携防災学習から、地域の防災について興味をもち、それぞれのクラスで地域に出かけて水害や地震の時に危険なところや安全なところ、役に立ちそうなものを探し始めた。フィールドオンというアプリを使い、写真や気づいたことを書き込んでいくことで、地域の防災マップができていく。防災という視点で地域を歩くことによって、普段とは違う発見ができたようであった。児童は「3枚しか写真を撮れませんでしたが、結構あるなと思いました。おすわさんの池が結構危ないなと思いました。大雨が来て、水位が上がったら結構怖いと思いました。それに空き家も結構あるので倒れてきたらいやだなぁと思いました。これから備えていきたいです」「とても危険な池があったり、今にもこわれそうな空き家などがあったり、たくさんの危ない場所がありました。だからこれからも松代の危険な場所や安全な場所をしっかり覚えて避難するときにしっかり安全に避難できればいいです」などと感じたようであった。

(4)松代地区防災人材育成プログラム「避難所開設訓練」に参加

1月、松代小学校体育館で松代地区防災人材育成プログラムによる「避難所開設訓練」が行われた。4・5年生の児童が、避難者のエキストラとして自主的に参加し、極寒の中の避難所体験をした。訓練中では、自分たちもできることを探しながらの体験であった。「ダンボールベッドを組み立てて座ってみました。安定感があり安心しました。でも毛布がなく寒かったので、『毛布は何枚ありますか』と聞いてみると『全部で80枚です』と言っていて、避難してきた人全員にいきわたらないと思いました。」「ブルーシートの上はとても寒かったし、今回はトイレは使わなかったけど、もし使えなかったら・・・と考えたら、大変なんだなと思いました。」「少し時間が経つとアメをもらいました。するとなんかホッとしてきました。『こういう工夫っていいな』と思いました。災害の時には三助と工夫が必要だなと思いました。」と体験してみなければわからない様々なことを感じることができた。

まとめ

2019年の台風19号災害は記憶に新しく、また、松代という地区は昔から幾度となく水害に襲われてきた地区である。地域の方々と話をすると松代群発地震のことがたびたび話題に上り、住民自治協議会で防災人材育成講座を開催するなど、防災意識が高い地区でもある。そんな松代地区に住む方々の力を借りて学習を進めることで、小学校児童の学びたい思いにあった地域連携防災学習を行うことができた。学習してきた児童の中には、さらに興味をもって、自主的に調べたり、考えたりする児童も現れた。今後も、児童の学びたい思いに寄り添いながら、地域の防災活動を担っていく児童を育成していきたい。