【白馬村立白馬南小学校】地図で調べた避難場所、本当に安全?防災学習で現地調査(令和5年度6年生)

【白馬村立白馬南小学校】地図で調べた避難場所、本当に安全?防災学習で現地調査(令和5年度6年生)

令和5年度防災学習報告白馬南小学校6年生: 「社会科・総合的な学習の時間」活動報告

  • ねらい

気象災害が発生すると想定し、地域のボランティアの方と一緒に地域を歩き、地域の危険箇所・資源、避難所の状況を把握する活動が、避難場所・避難経路を決める防災学習にどのような効果があるかを明らかにする。

  • 背景

宮本(2009)は身近な地域は野外での観察や調査が容易にでき、その地域的特色を肉眼でとらえ変容の様子も実際の姿から考察できるといった優れた教育的な価値を持つと述べている。しかしながら、フィールドワーク(ここでは野外調査とよぶ)の実施率の低さが問題視されている(岩本・河合・戸井田・西岡・吉永、2010;宮本、2009)。野外調査を行うとなると熱中症や不慮の事故の心配があり、鈴木(2011)は安全性の確保のため補助員やボランティアの協力が必要と述べている。

  • 白馬村のアーカイブサポーター

2014年の神城断層地震で被害を受けた白馬村内で復旧、復興の記録を継承していくため「神城断層地震アーカイブ」の構築の取り組みがある。白馬村公民館では村民対象に「アーカイブサポーター養成講座」を開催し、それに参加したアーカイブサポーターが地域の災害を調べ、「白馬村山麓めぐり」ツアーを年に複数回実施している。

この「白馬村山麓めぐり」ツアーを実施しているアーカイブサポーターズの有志の方に白馬南小学校の野外調査に同行していただいた。

4.活動の概要

[第1時]野外調査1 学校から避難する避難所を考える 180分

想定:神城地区に線状降水帯が発生し、子ども達の通学路で土砂災害の危険が出てきた。電話回線も不具合が生じ、親の迎えの連絡も取れない。学校の西側の山からの土砂流入が心配され、学校には留まれない。以上のことから雨が小降りになったときに避難する。

バスの乗車時には,班ごと調査結果を発表し、得られた情報を共有した。すべての避難所候補の現地調査終了後帰校し、防災レーダーチャートを利用した野外調査の結果を宿題で行うことになった。

[第2時]野外調査2 自宅からから避難する避難経路・避難所を考える 180分

【学習課題】休日自宅付近で災害の発生の危険性が出てきた。家族でどこに逃げたら良いか、児童の自宅分布に基づき、地域ごとに班編制を行い、各班に地域ボランティアの方ほかが加わり、村バスに乗車し、班ごと自宅のある地域で下車をした。避難所の見学および避難経路を歩いて、避難所としてふさわしいか危険箇所・防災資源がないか話し合った。あらかじめ決められた時刻になったら、バスに乗車し、帰校した。

[第3時] 防災新聞の作成と振り返り(90分)

防災新聞を作成するように指示し、児童は作成作業を行った。それを元に振り返りとして各自発表した。この防災新聞は後日行った授業参観日に展示を行った。 また、後日信州大学主催の防災学習成果発表会にZOOMによるオンライン参加を行い、学習成果を発表し他校の児童と意見交換を行った。

  • まとめ

学校および自宅からの避難所と避難経路を決める防災教育の学習プログラムを開発した。地域のボランティアの協力を得た2回の野外学習と防災新聞を作成する振り返りの授業から構成した。本授業プログラムの有効性を調べるため試行授業を行い、質問紙調査を行った。その結果、授業を受けて防災マップが気になるようになり、避難について真剣に考えようになった。防災マップは避難所・避難経路を考える学習に、野外調査は避難所や避難経路を決めるのに役立った。その理由は自分の家や地区にも危険なことがあることに気づき,家から避難所までの所要時間が分かった。野外調査をして家からの避難所までの経路の中に危険なところに気づいた児童は8割に達した。その理由に最も多かったものは増水する川であった。他にも現地に行ってみないと分からないことがあり、防災学習を家族とつなぐことができた。