学校安全総合支援事業について
―地域とともに歩む防災教育元年として地域防災参観日-
1 はじめに
会染小学校は北安曇郡池田町の南側に位置し、西側には高瀬川が流れ、北アルプスの常念岳や有明山が一望できる。このような会染地区に児童数204名が通学している。周囲を田畑に囲まれた水源豊かな平坦地である一方、高瀬川の氾濫に不安を抱えながら生活してきた歴史が存在する。そのためハザードマップは、水難重視で作成されている。また、活断層などの地震を想定した保護者への引き渡し訓練を池田町5校園で一斉実施するなど、本校を軸とした取り組みも同時に始めた。国型コミュニティ・スクールの運営も3年が経ち、地域とともに歩む視点への意識も徐々に高まりつつある元年である。
2 防災養育の取り組み
本校は、本支援事業の指定1年目である。学校防災アドバイザーの先生方にご指導をいただき、「地域とともに歩む防災教育元年」と位置づけ、会染コミュニティ・スクール運営協議会や池田町各地区自治防災会長会、池田町役場危機管理対策室と連携し、「池田町5校園引き渡し訓練」を経て、地域の方や親子で防災について考え合う「会染地域防災参観日」を実施した。そして、今年度は下記のような実践を行った。
3 会染地域防災参観日の実践
(1)活動の流れ・概要
会染地域防災参観日 11月9日(土)9:00~10:00
地域公開防災授業参観日として開催
1・2・3学年 もしも地震が起きたら ~教室や校内の危険個所を見つけよう~
4学年 会染水害防災マップづくり ~通学路の危険個所を見つけよう~
5学年 土砂災害学習
6学年 災害のとき自分だったらどうする ~できることを考えよう~
参加者 全校児童204名 教職員26名 保護者180名
会染コミュニティ・スクール運営協議会13名 自治防災会長15名 池田町役場危機管理対策室・池田町教育委員会6名
その他関係各者9名 計453名
(2)会染地域防災参観日の様子
ア もしも地震が起きたら~教室や校内の危険個所を見つけよう(1・2・3学年)~
支援者 保護者 87名 地域各関係者30名
日本赤十字社作成の授業プランから低学年は内容を共通にして各教室で親子参加型で実施した。どうして危険なのかを考えることを通して、何気なく過ごしている場所に多くの危険個所となり得る可能性が潜んでいることに気づき合う児童や保護者の姿があった。



<児童の振り返り>
1学年
・危ないものは高いところにおかないほうがいいと思いました。
・お母さんやともだちと学校で地震のお話ができてよかったです。
2学年
・地震はたくさんのものをこわしたりけが人がでるのでこわいです。
・学校の中で地震がきたときは、ものが落ちてこないように頭を守ります。
3学年
・避難訓練をときどきやっているけど、いつも気を付けていきたいです。
・いつもはだいじょうぶだと思ってたところも危ないので気を付けたいです。
イ 土砂災害学習(5学年)
支援者 県砂防事務所砂防ボランティア 5名
児童、保護者、地域各関係者が2教室に分かれて土砂災害についての動画を見たり講和を聞いたり防災グッズの体験をしたりした。特に、土砂災害を防ぐ堰堤の模型型実験と雨の降り方についての説明や防災グッズの体験では、詳しく知らない保護者も多く、怖さとともに堰堤や砂防ダムの重要性を知ることができ大変有意義な学びとなった。さらに家庭で考え合うきっかけをつくることができた。

<児童の振り返り>
・防災グッズは、知っていたけど使ったことがながないものが多かったので、説明していただいたり体験できてよかったです。
・土砂災害のモデルを使って説明を聞くことができたので、仕組みを理解することができました。
・クラスの友だちだけでなく家族や会染の地区のみなさんと一緒に防災のことを考えることができてよい参観日でした。
ウ 災害のとき自分だったらどうする ~できることを考えよう~(6学年)
日本赤十字社の授業プランから選択し、災害時に自分だったらそうするのか保護者とともにグループに分かれてできることを考え合った。ワークショップ形式で考えることを通して、大人の見方と子どもの見方には違いがあったり、どうすれば不安がなくなっていくのかを家庭に戻ってさらに考え合うきっかけをつくることができた。
<児童の振り返り>
・もしも震災がおきたら、自分はどう動いたらよいか考えることができてよかったです。
・日本は地震がおおいけど、会染地区は高瀬川の氾濫も気を付けなくてはいけない地区なので、そのこともしっかりとみんなで考えていきたいです。
・友達や家族とも一緒に考え合うことができてよかったです。
・今日は地域の方もたくさんいらっしゃっていて少し緊張したけれど、グループで災害がおきたらどうして行ったらよいのかを考え合うことができてよかったと思います。
・安心、安全にせいかつできるようこれからも自分にできることを考えて行きたいと思います。


エ 会染水害防災マップづくり~通学路の危険個所を見つけよう~(4学年)
―フィールドオンを活用した防災マップ作成―
支援者 防災アドバイザー1名 講師防災士1名 地域各関係者30名 保護者36名
防災減殺学習を通して、自分たちの通学路の危険個所に興味を持った子どもたちは、池田町ハザードマップで自分の住んでいる家の防災リスクを調べた。その結果水害のリスクがあることに気づいた。子どもたちは防災参観日を利用し、保護者とともに「フィールドオン」を用いて、実際に通学路を歩いて調査した。集約された結果を見て、
- 水量が多くなったらあふれそうな水路があること
- 洪水になったら見えなくなってしまう段差やふたのない堰など歩くのに危険な場所がたくさんあること
- マンホールなど見えなければすべってしまいそうなものがあること
- ガードレールのように、地面が見えなくなったら手すりとして使えるものもあることなどに気がついた。

その後、フィールドオンで調べた危険個所をグーグルマイマップへ落とし込み、種類ごとにマークや色を変えたり、コメントを打ち込んだりして見やすく整え「会染地区水害防災マップ」を完成させた。完成させた会染地区水害防災マップは町のHPにも掲載された。子どもたちは「自分たちのやったことが認められてうれしい」「水害が起こった時に役に立ったらいい」と言っていた。
3)防災アドバイザー 榊原先生のご指導より
東日本大震災の教訓から、学校における防災教育の在り方についてご示唆いただいた。特に危機管理体制については、避難訓練の形骸化によって判断が誤ってしまい、そのために児童や教職員の命を守れるか守れないかの岐路に立たされる局面が訪れかねないということもご指導いただき、考 えを深めることができた。

4 防災アドバイザーとの関わり
(1)5月30日(木)池田町5校園一斉保護者引き渡し訓練(会染小学校会場)の参観およびご指導
(2)7月23日(火)校長・教頭・安全教育係へのご講義
(3)10月22日(火)4学年防災ハザードマップづくり授業への事前指導
(4)10月31日(木)4学年タブレット動作確認授業への指導
(5)11月9日(土)会染地域防災参観日の参観および防災授業振り返りの会でのご指導
5 まとめ 池田町の少子高齢化が加速する中で、地域とともに防災訓練を行っていくあり方を見つめなおす機会が訪れている。このような現状を見据えながら、地域住民も参加できる防災教育を学校として充実させていく必要が一層必要である。殊に土砂災害の講演や実験、防災グッズの体験では、初めて知る児童や改めて実感する保護者、地域の方の姿があった。またハザードマップづくりでは、タブレットを活用して危険個所を親子で実際に自分の足で捜索して撮影し、その理由を見出し共有することで、地域とともに防災教育におけるICT活用の有効性を知ることができた。防災教育元年として池田町の防災教育を本校が牽引できたことは大変意義深かった。今後も地域とともに災害から身を守るための意識を高めるための発信を行い、そして高めるための学びを充実させていきたい。

