長野市立加茂小学校

長野市立加茂小学校

「自分たちが住む地域の防災マップをつくろう」

令和5年度長野市立加茂小学校「社会科・総合的な学習の時間」活動報告

長野市立加茂小学校

1 はじめに

 長野市立加茂小学校は、県都長野市の西部に位置し、善光寺の近くにある。学区は、長野市を代表する裾花側の近くにあり、幼稚園から大学まで、多くの学校が位置する長野市の文教地区となっている。また、茂菅や小田切のような山間地もあり、変化に富んだ広い学区から、約200名の児童が通学している。

 長野市のハザードマップを見ると、本校の学区内には何か所ものがけ崩れや地すべりの警戒区域が確認できる。子どもたちは、もし災害が起きた時には、身の安全を守らなければならない環境で生活しているのである。本実践は、そのような地域に住む子どもたちが、防災を身近なことと感じ、自らの生活している地域を防災の視点から見つめ直すことをねらいとしたものである。

2 学習の導入

 防災の学習は、4学年社会科の単元「自然災害からくらしを守る」と総合的な学習を教科横断的に実施した。

学習の導入として、副読本の『のびゆく郷土』や長野県のHPを活用し、長野県内で過去に起きた地震や水害について調べた。調べ学習を通して子どもたちは、長野県では過去に多くの災害に見舞われてきたことを知る。さらに、「“猪(しし)の満水”(令和元年度東日本台風)災害デジタルアーカイブ」のHPを活用し、令和元年度東日本台風の様子や被害について調べていった。HPには当時の写真やインタビュー映像があり、自分たちの身近で起きた災害について調べるうちに、子どもたちは、いつ起きるか分からない災害をより身近に感じていった。

3 防災学習の内容

① 10月16日:自分たちが住む長野県では、過去にどのような災害が起きたのかに調べた。(『のびゆく郷土』、長野県HP、「“猪(しし)の満水”(令和元年度東日本台風)災害デジタルアーカイブ」HPの活用)

【子どもたちの気づき】

・昔に善光寺のあたりで地震があったことが分かった。

・長野県内ではたくさんの災害が起こっているんだな。

・長野市でも大雨でこう水のひがいが出たことを聞いたことがある。

② 10月23日:地震や水害が起きた時に、自分たちの生活はどうなっていくのかについて考えた。

【子どもたちの気づき】

 ・家がこわれてしまうかもしれない

 ・学校がひなん場所になると聞いたことがある。

 ・食べるものはどうするんだろうか。

③ 10月26日:自分の家では地震や水害に備えてどのような取り組みをしているのか、タブレットで写真を撮り、共有した。(自助)

【子どもたちの気づき】

 ・非常食を備えている家が多いと思った。

 ・家のつくりも考えられているね。

④ 10月30日:災害に備えて学校ではどのような取り組みをしているのか考えた。学校が避難場所になったり、防災倉庫があったりすることに気づき、防災倉庫の見学を行った。(公助)

【子どもたちの気づき】

 ・部屋に区切れるような仕切りがあった。

 ・防災倉庫が二つあるけど、ちがいはあるのか。

 ・食べ物や飲み物だけでなく、服も入っていた。

⑤ 11月2日:災害から市民を守るために長野市ではどのような取り組みをしているのか(ハザードマップ、避難場所)を学習し、学区内のハザードマップを確認した。

【子どもたちの気づき】

 ・加茂小がひなん場所になっている。

 ・こう水や土しゃぃずれが起きそうな地区がある。

⑥ 11月13日:自分たちが住む場所の危険な場所や安全のための施設や設備を探すために、信州大学の倉澤様をお招きし、マップアプリ「Field On」の操作方法を教わった。

⑦ 11月20日:廣内先生、倉澤様、信州大学の学生さんに協力していただき、地区ごとに班をつくり、フィールドワークを行った。マップアプリ「Field On」を使用し、身近な危険な場所や安全対策について地区ごとに調べる活動を行った。

⑧ 11月22日:20日に調べた結果がまとめられたマップを見ながら、危険箇所や安全な設備について共有し、それぞれの地区の様子を確認した。

【子どもたちが考えたこと】

 ・往生地のほうは土しゃくずれになりそうな場所がいくつもある。

 ・石ひが落ちてくるかもしれないから危険だ。

 ・いざというときは近くにあるお店に行けばよさそうだ。

 ・ひびが入っているかべは、地しんが起きた時にたおれてきそうだ。

 ・妻科には川が流れているからあふれてくるかもしれない。

 子どもたちは、各グループの発表を通して各地区の危険な場所を確認しあうことで、今まで見ていた景色が違って見えてくるようで、たくさんの発見が見られた。各班の調査結果が一枚の地図に集約されることで、それぞれの発表をスムーズに見ることができた。

⑨ 11月27日:「自助・共助・公助」の取り組みについてまとめ、防災に関して自分たちにできそうなことを考えた。

【子どもたちが考えたこと】

 ・自分の家の周りの危険な場所を家族に伝えたい。

 ・もしものことが起きた時のために家の備えをしておきたい。

 ・災害が起きたら、家族や周りの人と協力したい。

4 終わりに

 学習の初めの子どもたちの災害への意識は、「過去に遠くで起きたもの」であり、自分の身近なものとして考えている児童は少なかった。それが、自分の住む地域を実際に歩いて調べたり、自分たちにもできそうなことはどんなことなのかについて考えたりすることを通して、「いつも通っている通学路のあそこが危険だった」「家族のためにも危険な場所を伝えたい」などの思いを持つようになり、防災への意識が高まっていった。その要因としては、マップアプリの「Field On」を使用して実際に地区を歩く活動を行ったことが考えられる。自分たちが実際に調べて記録したものがマップにまとめられたことで、学習意欲が高まり、自分が調べた地区はもちろん、他の地区の様子にも関心が向くようになった。自分たちが住む町や地区を防災的な視点で見ることで新たな発見も見られ、これからの子どもたちの地域での生活において、大変有意義な学習となった。

そのほか2・3年生は、防災・減災学習の入門として、日本赤十字社の防災・減災プログラムを受講し、「自然の中で起こりうる災害について」中でも「大地震の時の身の守り方」について必要な知識を学んだ。来年度以降の学習につなげていきたい。

(文責 教諭 佐藤航大)

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